地方公務員として働きながらの3回目の受験で、平成27年の司法試験予備試験に最終合格しました。
早速、平成28年の司法試験を、社会人受験生として受験。何とか合格しました。
参考になればと思い、勉強方法や、論文試験、口述試験の再現などをアップしていこうかと思います。
自分の経験、体験が、時間の経過により陳腐化したと感じた時点で閉鎖します。
地方自治体主査の司法試験への挑戦(H27予備試験合格、H28司法試験合格、71期司法修習生):【司法試験予備試験】平成27年口述試験(民事)再現

2016年07月27日

【司法試験予備試験】平成27年口述試験(民事)再現

パネル(表)

     Z
      ↑
     Y □ ※本件土地上に本件建物が
      ↑     建築されている図
     A → X 弁護士P

1 本件土地(時価4,000万円相当)について、AY間で無償の貸借が行われている。
2 Yは、本件土地上に本件建物を建築し、居住していたが、その後、これをZに貸したため、Aは、無断転貸により、本件土地の使用貸借契約を解除するとYに通知した。
3 その後、Aは、本件土地をXに売却した。Xは、本件土地からYとZを追い出したいと思っている。

※ 記載事項については、もう少し長文だったが、忘れた。結構、直接関係がないことも書いてあって、それがまた、混乱を招く原因に。わざと?

私:失礼します。◯室△番です。よろしくお願いします。
主査:お座りください。
私:失礼します(着席)。
主査:これから机においてあるパネルを読み上げますので、よく聞いておいてください。
(早口で読み上げ)分かりましたか?
私:はい(分からんが、分かりませんと言える雰囲気でない。)。
主査:では、まず、あなたがXの代理人弁護士Pであったとして、YとZに本件土地の明渡しを求める民事訴訟を提起するとして、その請求の趣旨は何ですか?
私:(ゲッ、土地明渡しにおける共同訴訟の請求の趣旨か~やばい、ノーマークだ。全く見たことない。でも、とりあえず何か言わないと…)え~っと、『被告らは、原告に対し、本件建物を収去し、本件土地を明け渡せ。』というものになります。
主査:(かなり困った様子で、)え~っと…、Yはそれでいいとして、Zには、本件建物を収去することはできますか?
私:(十秒ほど考えて、所有権がないから収去できないよな…と現場思考し、)いえ、できません。なので、Yに対しては、『被告は、原告に対し、本件建物を収去し、本件土地を明け渡せ。』となります。Zに対しては、『被告は、原告に対し、本件土地を明け渡せ。』となります。
主査:Zには、それだけでいいのですか?Zは、本件土地をどのような態様により占有していますか?
私:本件建物に居住するという形で、占有しております。
主査:それでは、Zに本件土地の明渡しを求める上で、本件建物から退去してもらう必要があるのではないですか?
私:はい、あると思います。
主査:では、Zに対する請求の趣旨をもう一度、言ってください。
私:はい。『被告は、原告に対し、本件建物から退去し、本件土地を明け渡せ。』というものになります。
主査:そうですね。では、まず、Yとの関係から聞いていきます。Yに対する訴状において、請求原因事実として、何を記載しますか?
私:(パネルを見て、『無償なのに賃借??』(貸借が賃借に見えたものと思われる。)、『建物所有目的でも、使用貸借なら借地権とはならなかったっけ?なのに、なぜ、こんな事実が記載?』、などと余計なことばかりが頭に浮かび、大混乱に陥る。)えっと、まず、Xが現在本件土地を所有していること、Yが本件土地上に本件建物を所有していること、そして本件建物がAY間の賃貸借契約期間中に建築されたことと…(この辺りから、主査・副査ともに、目を丸くしてこちらを見つめる。何言ってんだ、こいつは、と言わんばかり。しかし、もう後には引けず。)本件土地がAの解除通知時に存在していることです。
主査:(発言が終わるかどうか、というタイミングで、即座に突っ込み)え~っと、そんなこと、本件で必要?本件訴訟物は何だと考えているの?
私:(訴訟物と言われ、はっと気が付くとともに、かなりやばい方向に言っていることを自覚したので、ここで挽回しないと先はないと思い、多少、饒舌に返す作戦に出る。)あっ、本件訴訟物は『所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権』ですので、最後申し上げた二つ、本件建物がいつ建築されたか、などは、請求原因事実として不要です。なので、『Xの現在所有』と『Yの現在占有』のみが請求原因事実となります。
主査:(少し怒ったような感じで)そうですね。Yの占有については、『Yは、本件土地上に本件建物を所有している。』という、占有態様まで主張することになりますね。ところで、まあ、Yとしては、Xの本件土地の現在の所有、これを認めないよね。その場合はどうする?
私:その場合は、権利自白を活用して、Aのもと所有、AX間の本件土地の売買契約締結の事実を主張します。
主査:そうですね。では、これらの事実関係に、Yは、Aに対し、本件土地の貸借に当たり金銭(賃料って言ったかも。)を支払っていたという事実関係が加わったとします。この場合に、Pとして、Yからどのような抗弁が主張されると予想されますか?
私:建物所有目的の…(部屋の空気が凍りつく。明らかにトンチンカンな答えということが分かる。)えっと…、(20秒くらい考えると、パネルの『Yは、本件建物について所有権保存登記をした。』という事実関係が目に入り、あっ、と気が付く。)あっ、借地権による占有権限の抗弁が予想されます。
主査:(よくその単語が出てきたね~みたいな雰囲気もなく、即座に切り返し)でもさ、Xは本件土地の所有権移転登記を得ているんだよ。それでも抗弁として成り立つの?
私:はい。Yには本件建物の保存登記がありますので、Yの借地権には対抗力があります。
主査:はい、Yには本件建物の所有権保存登記があるから対抗できる、ということですね。では、条文上の根拠は?
私:…民法の賃貸借に関する定めは610条前後に規定してありますので,その周辺にあったかと…法文を参照させていただいてもよろしいでしょうか?
主査:借地借家法だよね。借地借家法10条1項だよね。では,これが抗弁となる理由は?
私:はい。抗弁とは、相手方が主張する請求原因事実と両立し、かつ、相手方が発生させたい法的効果の発生を障害し、消滅させるものを言います。Yの占有権限の抗弁は、Xが主張する本件土地の現在のXの所有や現在のYの占有といった事実と両立し、かつ、Xが発生を望む所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権を障害するものなので、抗弁となります。
主査:じゃあさ、Aは、Yに対し、本件土地の無断転貸を理由に本件土地の貸借契約を解除しているじゃない。このことは、Xにとって、抗弁になる?
私:いえ、なりません(どうだと言わんばかりに、自信満々)。
主査:なぜ?
私:本件土地は建物所有目的なので、その土地上に建物を建てて貸すということは、通常、想定されていると考えられるからです。
主査:(主査・副査ともに首をかしげて)えっ。そうなの?
私:(数十秒考えされてもらい、判旨を思い出そうとするも、浮かばず。)
主査:土地の転貸じゃないからね。建物の賃貸だからだよね。じゃあ、次に行きます。
※ 致命傷にはならないか?発展的な内容のような気もするし。
主査:Pが、Aから、Xとの本件土地の貸借について聞き取りを行ったところ、Yは、Aに対し支払っていた金銭(賃料と言ったかも。)の額は、固定資産税相当額だったという事実が判明しました。この場合、Pとして、先ほど抗弁として予想されると言われた占有権限の抗弁に対し、どのような抗弁を主張しますか?
私:(えっ、抗弁って言ったよね?否認じゃないの?よく分からんからそこは濁して…)はい。不動産の貸借において、仮に金銭の授受があったとしても、それが固定資産税相当額に過ぎないのであれば、その契約は使用貸借契約であると解されています。なので、AY間の契約は使用貸借契約であるから、Yの占有権限の抗弁は理由がないと主張します。
主査:これは、えっと、抗弁なの?
私:(あなたが抗弁として何を主張するか、と聞いたよね。被告の抗弁に対する原告の主張なので…)再抗弁?
主査:えっ、再抗弁?
私:(あなたが『抗弁として何を~』と言ったよね(怒))あ、いえ、否認です。先ほど申し上げた抗弁の意義からすれば、Yが主張する賃貸借契約成立の事実を否定するものですので、否認になります。
主査:そうですね、積極否認ですね。では、Pが本件訴訟を提起するに当たり、証拠を提出する必要があるかと思いますが、あなただったらどのようなものを集めますか?
私:(抽象的な聞き方だな…)えっと、まず、AX間の本件土地の売買契約書を考えます。また、AY間の、本件土地の貸借契約書があるでしょうから、それも考えます。
主査:うん、他には?
私:YZ間の、本件建物の賃貸借契約書も考えます。
主査:うん、でも、Yはくれないだろうし、入手困難だよね。他には?あなたがさっき言ってくれた請求原因との関係で、何かない?
私:はい、本件土地の所有権移転登記の証明書が考えられますが、登記には所有権帰属の推認力はないとされていますし…
主査:うん、今、言ってくれたもの、正式な名称は?
私:(あ、これでいいのか。実務上も、添付するもんな。)はい、本件土地の登記事項証明書です。これを登記所に取りに行きます。
主査:うん、そうだね。まあ、取りに行かないで、取り寄せることになるかな。Zとの関係では?何かない?Zは、どのような形で本件土地を占有しているんだっけ?
私:はい、本件建物に居住する形で、本件土地を占有しています。なので、え~っと、現地調査をするとか…
主査:市役所で取れるもの、ない?
私:あ、住民票です。
主査:そうだね。では、パネルを裏返してください。

パネル(裏)
     Z
     ↑
弁護士Q Y □ ※本件土地上に本件建物が
     ↑↓4,000万円  建築されている図
     A → X 弁護士P  
      1 ,000万円

1 Yは、Aに、賃料を支払っていた。
2 Yは、Aに、4,000万円を貸し付けていた。
3 Aは、無資力である。

主査:表に記載されていた事実関係に、一部分が追加されています。Yは、弁護士Qに本件訴訟の訴訟代理人を依頼しました。これからは、Qの立場で考えてください。まず、先ほど、占有権限の抗弁の主張が予想されるとおっしゃいましたが、その抗弁事実として何を主張しますか?
私:(ヤバイ。特別法の要件事実とか、見たこともない。ここは基本に立ち返って、通常の賃貸借の要件事実を言うしかないな。)はい、まず、AY間の本件土地に係る賃貸借契約の成立と、これに基づき本件土地がYに引き渡されたこと、です。
主査:他にはないの?これだけでいいの?
私:(1分間くらい、考えさせてもらう。パネルを裏返してみたりしてみるが、全く思い付かず。)
主査:あなたが先ほどおっしゃってくれた、占有権限の抗弁との関係で、何かない?
私:(やはり思い付かず…要件事実、早く終わってくれ~と願う。)
主査:Yの、本件建物の所有権保存登記の存在を主張する必要があるよね。
私:あっ、主張する必要があります。
主査:では、次に、図に追加されているとおり、Yは、Aに対し、4,000万円を貸し付けていましたが、Aは、本件土地を、Xに1,000万円で廉価売買しました。この場合、Qとして、どのような手段を講じますか?
私:はい、裁判上、詐害行為取消権を行使します。
主査:うん、詐害行為取消権ね。それは、今、裁判上と言ったけど、どのように請求するの?
私:(意味が分からず)えっと、それは、どのように行使するのか、という趣旨でしょうか?
主査:うん、まあそう。
私:詐害行為取消権は、抗弁としては主張できませんので、反訴提起をするか、別訴提起することを考えます(副査、大きくうなずく。)。
主査:うん、そうですね。
※ 他の人の感想などを見ていると、ここで、詐害行為取消権に係る請求の趣旨を答えさせたかったみたい。自分の場合は、副査が大きくうなずいてくれ、そのまま進行した。
主査:では、また事例が変わって、今度は再度、Pの立場で考えてください。本件訴訟で、Xは勝訴し、判決が確定しました。しかし、YとZは、本件土地を明け渡そうとはしません。あなたは、本件訴訟の判決の内容を、どのようにして実現しますか?
私:はい、強制執行を考えます。
主査:まあ、強制執行は当然なんだけど、具体的には?
私:はい、不動産の明渡しの強制執行を考えます。具体的には、執行官から、本件土地の占有をY、ZからXに強制的に移転してもらいます。
主査:うん、でも、Yは、本件建物を収去する義務も負っているよね。でも、これを果たそうとはしません。その場合、どうする?
私:はい、その場合は、代替執行を考えます。第三者に本件建物を収去させ、その費用をYから徴収します。
主査:(副査、首をかしげる。えっ、前日勉強したとおりの内容なんだけど…と思っていると、)うん、○○して△△して、××するってことね(聞き取れず。納得してくれて、話を進めてくれた感じ。)。では、本件訴訟の口頭弁論終結後に、Zは、仮にWとしましょうか、そのWに本件建物を転貸していた事実が本件判決確定後に判明しました。この場合、本件訴訟の確定判決で、Wの占有を排除することはできる?
私:えっと、Wが現れたのは、本件訴訟の口頭弁論終結後、ということでよろしいのでしょうか?
主査:うん、そう。
私:この場合、本件判決の執行力は、Wには及ばないと思います。
主査:うん、そうだね。この場合、Pとしては、どうしておくべきだったのかな?
私:はい、Zに対し、占有移転禁止の仮処分を申し立てておくべきだったかと思います。
主査:うん。Yには?必要ないの?
私:(伊藤塾の模試で、間接占有者でない者には占有移転禁止の仮処分を申し立てる必要はないということを言われたので、)はい、占有移転の可能性はないので、不要かと思います。
主査:でもさ、例えば、Yが誰かに本件建物を売却するということはあるんじゃないの?
私:(あっ、そうだ。あり得るよね。)あ、はい、あり得ると思います。なので、Yにも占有移転禁止の仮処分を申し立てる必要があるかと思います。
主査:占有移転禁止なの?Yは、本件土地をどのような態様で占有しているの?
私:本件建物を所有するということを通じて、占有しています。
主査:じゃあ、何の仮処分になるの?
私:(タジタジ)はい、処分移転禁止の仮処分になります。
主査:処分『移転』禁止?まあいいや。はい、これで終わりです。
私:すみません。どうもありがとうございました。失礼いたします。

<自己評価>
60点?

<感想>
想像していた10倍、緊張した。主査の先生も、場を和ましてくれるようなタイプではなく、やりにくさを感じた。ただし、色々と誘導してくださったり、答えが出るまで待ってくださったりと、力が出せるような配慮はしていただいたかなと思う。
最後、早く部屋を出たかったので、仮処分の種類名を言い間違えたまま終わってしまったが、無理矢理にでも言い直しておくべきだったかと思う。まあ、主査の先生は、もういいよ、ということだったし、もう分かった、という雰囲気に感じた(もう落とすからいいよ、ってことかも。)。
副査の先生の反応を確かめる余裕がなかったが、うなずいたり、首をかしげたり、反応を見せてくれるので、よく確認しておくべきだと思った。
出題については、例年、要件事実については新問研レベルしか出ていなかったが、今年辺り難しめの問題が出るのでは?とは思っていたものの、まさか類型別にも載っていない借地借家法や、詐害行為取消権の請求の趣旨が聞かれるとは思わなかった。
今後の要件事実としては、やはり最低限新問研をマスターすべきとは思うが、少し高度な内容も必要になってくるかも。目を通しておき、誘導されれば出てくるレベルで構わないので(自分は初見だったので辛かった。)。また、民法の実体法としての基本判例なども、短答過去問レベルで十分なので、確認しておくべき。
民訴は、詳しい民事手続はほとんど出なかったが、短答過去問が中心になると思う。
執行・保全は、直前期にちょろっと見直す、でもいいかと思う。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

地方自治体主査

記事検索
メッセージ

名前
メール
本文
最新コメント